知床半島のヒグマ
目次
カムイワッカの滝
船に乗り、海上からカムイワッカの滝を眺めますと、さまざまな想いが胸を駆け巡ります。
自分で望んでここに来ているのに、自分がこの場所にいて、そして自分が存在してることがとても不思議で、ただ、ただ、カムイワッカの滝を眺めます。
私たちが生まれる前より、もっともっと前からそこにあり、その間の、何十年、何百年、何千年という前の時代の人類の営みを考えると、とても恵まれている時代に生きていることを実感できます。
カムイワッカの滝を離れますと、断崖絶壁だった海沿いの風景が、上陸しやすそうな、平地の海岸線に変わりました。
すると、誰かが声を上げました。
「ヒグマだ!」
え?どこどこ?
ヒグマどこ?
船に乗っているみなさんは、それを見ようと、船の片側に集まります。
「親子だ!」
どうやらヒグマの親子がいるようですが、人の頭で、海岸線の景色がよく見えません。
私は、人の頭の隙間から海岸線を覗きました。
知床のヒグマ
人の頭の隙間を探し、そこから海岸線を覗きますが、ヒグマがどこにいるのかわかりません。
「ヒグマどこですか?」
私は目の前の人に聞きました。
すると、目の前の人は
「あそこです、見えますか?」
と海岸線を指差してくれました。
指差ししたその先には、黒い物体があり、私は最初、それが生き物ではなく、岩か何かだと思いました。
しかし、すぐにそれが動いているのがわかり、4本の足を地面につけて、四つん這いの姿勢で歩く熊だということがわかりました。
お母さんらしき個体のヒグマのすぐ横を、子供らしき小さな個体も歩いています。
海上から知床半島の海岸線にくると、このように海岸線を歩いてる野生のヒグマを見れるというのは、なんとすごいことなのでしょう。
そしてその後は、断崖絶壁の上の方の草原を、大きなヒグマが、遠ざかるように走って行きました。
また、秋口になりますと、鮭が遡上してきますので、船でルシャまで行けば、船上から、河口で狩りをしているヒグマを見ることができます。
歌舞伎座に例えますと、舞台から一幕見席ぐらいの距離なので、双眼鏡を持っていった方が楽しめるかもしれません。
湯宿だいいちのシマフクロウといい
(歌舞伎座に例えますと桟敷席)
釧路川の、オジロワシや鹿やタンチョウといい
(歌舞伎座に例えますと一等席)
知床観光船で見れる野生のヒグマといい
(歌舞伎座に例えますと四階一幕見席)
北海道では、野生動物を保護しながら、その姿を見れる知恵と工夫と演出に、人間の素晴らしい叡智を感じます。
しかし、その後、私は知床岬行きの観光船に乗ったことを後悔するのでした。