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疲れを癒す自然と友人2

目次

感情システム

自然がここまでの効果を持つのは、人類の「感情システム」に影響を与えるからです。

「感情システム」は人間の心の働きを3種類に分類した考え方で、次のパーツから構成されています。


・興奮
「喜び」や「快楽」といったポジティブな感情を作り、獲物や食事を探すためのモチベーションを生み出すシステム。おもにドーパミンで制御されている。


・満足
「安らぎ」や「親切心」といったポジティブな感情を作り、同じ種族とのコミニケーションに役立つシステム。オキシトシンなどで制御されている。


・脅威
「不安」や「警戒」といったネガティヴな感情を作り、外敵や危険から身を守るためのシステム。アドレナリンやコルチゾールなどで制御されている。


私たちが最高のパフォーマンスを発揮するためには、3つのシステムがバランス良く機能していなければなりません。

快楽ばかりを追う人生は退廃に至り、安らぎだけの毎日に前進はなく、不安ばかりの暮らしは日々をよどませます。

それぞれがしっかり噛み合ってこそ、人間はうまく機能できるのです。

自然の環境は、3つの感情システムをバランス良く刺激します。季節のうつろいや草木の変化がほどよい興奮を生み、緑に守られる安心感が心地よい安らぎを生み、森や川に潜む未知の脅威がときに警戒を生みます。

自然のなかにいれば、特定のシステムが暴走することがありません。

古代ローマ帝国

ところが、都市の暮らしでは、おもに「興奮」と「脅威」のシステムだけが活性化しやすくなります。

その極端な例といえば、古代ローマ帝国でしょう。

当時のローマは、イタリア半島の属州から莫大な富が本国内に流れ込んでいたため、ローマ市民には食料と娯楽がタダで提供されました。

世界史にいう「パンとサーカスの都」です。

快楽の追求はエスカレートを続け、やがてローマ人たちは、食べたものをいったん吐き出した後、胃袋が空になったところでまた食事を行うようになります。

鳥の羽で喉の奥をくすぐって嘔吐を繰り返しては、キジの脳やフラミンゴの舌といった珍味を貪るのです。

いっぽうで、ローマの暮らしは脅威にも満ちていました。

人口が密集したせいで伝染病に弱くなり、町中に腸チフスやマラリアが蔓延。

蚊が多い7月〜8月には大量の遺体が路上にあふれ、当時のローマでは夏を「死の季節」と呼ぶほどでした。